教育および研究方針
高井研究室では次のような学生の育成を目標にしています。

  1. 広く好奇心を持ち、幅広い視点から旧来の考え方に捉われない思考を持つ多様性のある学生
  2. 豊かな人間性と技術者倫理を兼ね備え、専門知識を身につけた、社会貢献、国際貢献できる学生
企業ではアナログ回路設計者の需要は高く、即戦力となる学生が求められています。 アナログ回路設計者に求められる能力は、回路設計、レイアウト、実測と幅広いです。 このような社会の要求に対応できる、自立した技術者の育成に力を入れています。
キーワードは「アナログ」
携帯電話、TV、カメラなどはアナログ方式からディジタル方式へ移行し、 高機能を実現できました。 世の中はアナログからディジタルへという流れがあります。 これはアナログは古い技術でディジタルが新しい技術であることを意味しているのでしょうか?
この疑問に答えるには「方式」という言葉が鍵になります。 つまり、記録や通信の規格がアナログ方式からディジタル方式に移行したことを意味しています。 しかし、我々が扱っているのは「方式」ではなく「回路」です。 アナログ回路です。
世の中にある全ての信号(音楽、声、温度、光などの強弱)はアナログ信号です。 身の回りの信号を処理するためにはアナログ回路が必要なのです。 また、回路レベルで考えるとディジタル信号もアナログ信号の1つと考えられます。 ディジタル信号処理もアナログ回路が支えているのです。 つまり、アナログ回路は常に最新であることが求められているのです。
研究内容
  1. 人工知能を用いたアナログ集積回路の自動設計
  2. 電源回路の小型化、高効率化
アナログ集積回路の自動設計
Aacd  現在の電子機器設計は、集積回路設計の専門家が「少品種大量生産」の製品設計をしてきました。 しかし、これから来る「超スマート社会」に対応し、社会にイノベーションを起こすためには、多種多様な異分野の非集積回路設計の専門家がアイデアで勝負する「多品種少量生産」の時代へと変革する必要があります。 そのためには集積回路設計の専門家でなくても集積回路を設計できる環境が不可欠です。
以上の社会の要求に対して、研究室では実現が困難と言われているアナログ集積回路の計算機による自動設計実現のために、 有能なアナログ集積回路設計者の匠の技を学習し、進化させることで、今まで人間では設計できなかったアナログ集積回路の設計を目指しています。 具体的には次の通りです。
機械学習
Aacd ml  アナログ集積回路設計者の中には、アナログ・グルと呼ばれる天才的な回路設計者が存在します。 彼らの設計する回路は芸術的であり、回路設計者の憧れであり目標です。 アナログ・グルの設計した回路は現在でも多くの製品で利用されています。 人工知能のアルゴリズムの一つである機械学習を用いてアナログ集積回路設計者の匠の技を学習することで、 設計者の「勘」を学習し、アナログ・グルが設計するような芸術的な回路を自動設計することを目指しています。
コンピュータ将棋
Aacd gt1  棋士は「手を読む」とき、局面の評価と手の可能性の探索を繰り返します。 このプロセスはアナログ集積回路設計者が回路を設計するプロセスに非常によく似ています。 そこで、アナログ集積回路設計者が回路を設計するプロセスを、将棋の「手を読む」という思考を模擬することで、 アナログ集積回路の自動設計を実現します。
生物の進化論
Aacd ga  生物は「選択」「交叉」「突然変異」を繰り返して進化してきました。 この進化の過程を模擬して、アナログ集積回路を進化させることで設計者が必要とする回路を自動設計します。 「機械学習」と「将棋の手を読むプロセス」と「生物の進化論」を組み合わせることで、今まで人間では設計できなかったアナログ集積回路の設計を目指しています。
回路図の検索
 我々の研究室では、回路構造の検索アルゴリズムを構築しました。 初めはこのアルゴリズムはアナログ集積回路の自動設計を効率的にするためでした。 しかし、このアルゴリズムを応用すると回路図の検索ができることに気が付きました。 現在、様々なことが検索できるようになったことで多くの技術革新が起きました。 回路図が検索できるようになることで、我々が想像できない技術革新が起きると期待しています。
電源回路の小型化、高効率化
Power 電子機器では不安定なエネルギー源から多くの安定な電圧を出力する電源回路が不可欠です。 エネルギー源から効率よく電圧を変換することは、省エネルギーのためにも重要な課題となっています。 電源回路の小型化技術は、携帯機器の軽量化・小型化に直結し、重要です。 以上の社会の要求に対して、研究室では以下の内容を研究しています。
単一インダクタ多出力 DC-DC Converter の研究
Sido 従来は必要な電圧の数だけ電源回路を実装していたので、インダクタも電源回路の数だけ必要となり、面積が大きくなる原因でした。 そこで、1つのインダクタを多数の出力で共有することで電源回路の面積削減法を考案しました。 出力電圧を安定にするために必要な制御回路の方式を提案しました。 以下がその方法です。
  1. 電圧制御方式
    消費電力の削減などで2つの特許をとりました。
  2. 電流制御方式
  3. ヒステリシス制御方式
  4. 排他的制御方式
    制御方法で特許を2つ取りました
  5. 適応制御方式
  6. シリアル制御方式
  7. その他
擬似アナログ信号を用いた DC-DC Converter の EMI 低減の研究
Pas emi DC-DC Converter はスイッチングを繰り返すため、電流や電圧の急激な変化が回路内で起きてしまいます。 この急激な変化は回路の性能を低下させる原因(EMIと言います)となり、法律で一定の数値以下に制限するように決まっています。 EMI を低減させる方法は多数ありますが、我々の研究室ではアナログ信号の特徴を最大限に利用して最小限の回路の追加だけで大きな効果を得られる方法を考えました。 この手法を DC-DC Converter の制御方法のうち電圧制御方式とヒステリシス制御方式に適用し、大きな効果があることをシミュレーションと一部測定でも確認しています。 特にヒステリシス制御方式はスイッチング周波数が一定でないため EMI 低減が難しいですが、提案手法を用いることで実現可能であることを示しました。
現在は、さらに多くの制御方法に適用できないかシミュレーションで検討中であるとともに、実測による確認もしています。